コロナで変わった学生たちの学び。
「ニュースを見るようになった」
「本を読むようになった」と振り返る学生たち。
――リモート授業によってコロナ以前とは異なる達成感や充実感を得たという学生たちの思いをどのように把握したのでしょうか
コロナ禍は100年に一度の大事件です。そんな機会は貴重だから、そこでどんなことを考えたのか記録しておくべきだろうと「コロナで変わった私の暮らし」という文集をつくりました。20歳の自分が何を考えていたのか、自分のことばで残そう、と。
そこには、アルバイトで「スーパーマーケットの仕事は命がけだった」とか「薬局づとめで、金回りがよくなった」「田舎に帰って過ごした」などのコロナならではの声が多くありました。
そのほかには「家族との対話が多くなり、仲良くなった」「料理をするようになった」「部屋をきれいにするようになった」という声や、大学生なら当然やるべき「ニュースを見るようになった」「本を読むようになった」という内容も多かったです。
ニュース見るのは学生が社会化していく第一歩。外に向けて興味関心が起こり、政治に対しても意識が高まる。コロナでなんで自分たちがこんな目に合わんといかんのかという怒りがエネルギーになっているという感じですね。
――リモートになることで、キャンパスでの交流が減ったという批判もあります
キャンパスでの学生同士の交流はけっこう表面的です。24時間スマホでオンラインでつながっているけど、じっくり語り合うという濃密なコミュニケーションは少ないという印象です。大学という空白の多い時間の中でするべきコミュニケーションはそれでしょう。学生時代の豊富な自由時間はそんなことをするためにある。でも、本気でわかり合うためには、まずは本を読むなり文章を書くなりして自分の思考を深めることが大事です。コロナ禍の中で世俗的な誘惑が絶たれたことで現れた空白の時間。そこで自分と向き合いはじめた学生は多いと思います。コロナ禍が弱まり本格的に対面授業が再開された時、ちょっと深くなった学生たちが交わす対話が楽しみですね。
――コロナを通して、本来大学生がやるべきことをするようになった、ということですね
僕が教えているのは公共学部なので、対話やきずなの大切さを教えます。でも、ちゃんとつながったことない学生に「つながりが大事やで」と教えてもわからない。
コロナになって「人とのつながりって大事」だと気づくことになりました。現代社会ってこんなことで崩れてしまう脆さがあるのだということが初めてわかる。そこで問題意識が芽生え、あれこれ考え出すと思うんです。
学生は貧乏の苦労なく育てられ、世の中の厳しさを知らないまま就職し、世の中を舐めた感じで生きていく。しかしそんなことしていると、どこかで必ずつまずくということを知らない。それがコロナをきっかけに学生のうちに目が覚めることができた。
コロナという誰も経験していないことに遭遇して、ぽかっと開いた時間をどうクリエイティブにデザインして活動したかとうことを就活でいえるようにしろと学生に指導してます。
僕は関西大学出身ですけど、入学した年は学園紛争で半年授業が行われなかった。レポート試験になって、今回同じ状況になった。コロナになって「どうすんねん」といっていたけど、「どないでもなるな」と思ったらやっぱりそうやった。
リモートの授業で行き届かないことがあったとしても、コロナを経験してからの方が勉強してるし、自分自身とも向き合っているし。結局、人間は「置かれたところで咲けば」いいんですよ。問題を言い出したらあれこれある。けど、目の前に突然現れた環境をどう活かすかなんですよ。
(2020年10月上旬収録。「#3新しい時代を生き抜ける力を、学生たちが身につけるために必要なことは。」へ続く)