大阪商業大学
公共学部教授 桑島 紳二

University

#03

コロナで変わった学生たちの学び。
新しい時代を生き抜ける力を
学生たちが身につけるために必要なことは。

――ゼミでの指導はどう変わりましたか?

木曜日の2限3限にやっていた「フィールワークゼミ」はZoomでオンラインでやりました。

これは、一般的なゼミとは違って、どんどん外に出ていって社会の人々の胸を借りていろいろなことをやらせてもらおうというゼミなんです。外に出ていくとけっこう時間を取られます、なので「レポートや論文の書き方」とか、「先行研究の論文を読んで考える」とか、そういうところがなかなか腰を落ち着けて取り組めなかった。それがコロナで「外に行ったらダメ」となったので、文書作成や専門書や論文の輪読などにじっくり取り組みました。
文書作成に関して言えば、誰でもそれなりに身につくわけで、要は真面目にやるかやらないか。それをオンラインでやったんですよ。最近の学生は本を読む習慣がないですから、すごく勉強になったと思います。

この手の講読のような授業は地味なんで通常は集中力が続かないのですが、実際にいるところは自分の勉強部屋でひとりなのに、バーチャルではみんなといっしょに勉強しているという、ある意味、不思議な環境が功を奏したのかもしれません。

ゼミも10月からは対面式に戻りました。ゼミらしい学びを進めていく上での知的な雰囲気は前期のオンラインの授業を通じて醸成できました。前期は一度も対面したことがなかったのにすでに知り合いという不思議な感覚で後期の授業はスタートしました。学生同士の関わり合いはこれから深めていってもらえればいいと思います。

――先生方はリモートでの授業を急遽強いられたわけですが、ご苦労も多かったと思います

私自身、新たなチャレンジだった。自宅と研究室と両方使い、ミキサーなどの必要な機材を買って編集やミックスもしました。もともとパソコンにもそういうソフトはプリインストールされていたし、大学からもmanabaというクラウド型教育支援サービスは提供されていた。買い足す機材もさほど高価なものではない。ようするに用事がなかったからやっていなかっただけ。やってみたら誰でもできる。金もノウハウもなくても、やる気さえあれば誰でもできる。世の中はそうなっていました。YouTuberの業界はなんぼも先へ行っています。

――リモートが不得意な先生もいらっしゃるのではないでしょうか

「できません」という先生もおられると思いますが、私の場合、「ムリ!」という学生に対して、「やる前からムリとか言うな!」といつも言っている手前、そうも言えない。急遽オンライン教育に切り替わったころは混乱もありましたが、多くの先生が奮闘努力の甲斐あって自己流の教授法を確立されておられるのではないでしょうか。
座学だけでなく実技系の指導も、内容を踏まえて工夫すればいろいろな方法があると思います。もちろん対面でないとできないこともありますが。

――リモートによる指導にはまだまだ可能性があるということですね

たとえばどんな組織にも、コロナ前は、石頭の人が重石になって、本当はできるのに前に進めなかった、とかあると思うんです。その重石が今回のことをきっかけに取れて実際にやったら「できるやん」って。

YouTubeが自宅のテレビで見れるようになって、大手のマスメディアの番組よりもそっちの方が面白い時代です。芸人ヒロシがキャンプする番組知ってます? けっこう儲けているようですけど。
従来の放送局のように、多額の設備投資して高学歴の人間を大量に雇ってタレントに高額のギャラ払ってひな壇座らせてしゃべらせるトーク番組と、たった一人でやるキャンプのコンテンツが互角にやりあって、一人が勝ったりする時代なんです。

ブランド大学へ行ったら放送局に入れるみたいな既定路線が今まであった。入ったら入ったで、どこかで見たような予定調和の番組作るんですよね。今、世の中で評価されるのはそういうお利口さんではなくて、おもろいことを考えたりやってみたりする人間でしょう。そういう人間を育む。今は、個人の生き方としてそっちを選ぶことが否定はできない世の中だと思うんです。ちゃんとした生業があればそのままやって、冗談でやってたらそれがヒットして、それから生業にしてもいい。個人でその気になればいろんなことができることを、大学でもっと伝えないといけない。

若い頃、編集の仕事をやっていました。昔は写真植字の職人とかデザイナー、カメラマンに「よろしくお願いします」って頭下げてやっていたけど、今は大概のデザインはテンプレートがあるし、カメラの性能もずいぶんよくなりノウハウも公開されている。時代としては「デザイナーいらん」「カメラマンいらん」ってなっていて、誰でもできる、資本がなくても発信までできる、という環境が整っている。それに「気がつこうぜ」と授業でやっています。

――どのような授業で学生に呼びかけているのでしょうか

たとえば、今はコロナで止まってしまいましたが、東大阪市の小坂で「東大阪こさかJazz」って地域おこしの取り組みがありまして、「こさかJAZZストリート」というイベントの広報と人集めをうちのゼミの学生がやりました。2019年のことです。
1,000人の来場者を得るためにはどうしたらいいか。ある特定の日に1,000人を集めるっていうのはけっこう難しいことで、それでも学生たちはチラシとかポスターとか地域メディアとか主体的に取り組んで、実際に1,000人を集めました。
1,000人投票してもらえれば市議会議員にもなれるわけで、学生たちには「大学で学んでいることと遊びでやっている動画づくりなどを結びつけて実践したら、地域どころか世の中さえも動かせる」と呼びかけました。
「先生そんなん無理やで、世の中あまくないで」と知ったようなことを言う学生がいます。親御さんたちが家庭で言ってることをそのまま言葉にしているんでしょう。やったこともないのにね。だから、低いハードルや中くらいのハードル、高いハードルを用意して、飛び越えてもらって成功体験をして自信をつけてもらう。
コロナに覆われた今は年配者も若い人も初心者。逆に言えば、だれでも絵を描こうと思えば描ける時代です。そのあたりゼミ生たちとともに面白がって描いていきたいと思います。


(2020年10月上旬収録)

Profileプロフィール
大阪商業大学
公共学部教授
桑島 紳二
関西大学社会学部(マスコミュニケーション専攻)1978年卒業、
兵庫教育大学大学院 2013年修了。
専門分野は芸術社会学、キャリア教育。カメラマン、広告制作会社プロデューサーとなり、
その後、神戸学院大学教授(芸術文化領域)を経て、現職。
NPO法人淡路大磯アート山を創る会理事。趣味は打楽器による即興演奏(ジャズ)。
Profileプロフィール
大阪商業大学
公共学部教授
桑島 紳二
関西大学社会学部(マスコミュニケーション専攻)1978年卒業、
兵庫教育大学大学院 2013年修了。
専門分野は芸術社会学、キャリア教育。カメラマン、広告制作会社プロデューサーとなり、
その後、神戸学院大学教授(芸術文化領域)を経て、現職。
NPO法人淡路大磯アート山を創る会理事。趣味は打楽器による即興演奏(ジャズ)。

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