学部創設100年の伝統を生かし
先端技術の研究拠点形成をめざす
先端技術の研究拠点形成をめざす
抜群の立地条件にある駿河台キャンパス
――理工学部は昨年、創設100周年を迎えました。約24万人の卒業生を輩出し、日本の科学技術発展に貢献してきました。
私が理工学部長になってまず意識したのは、歴代の学部長が何を考え、どう行動したのかということでした。関東大震災からの復興に尽力し、わが国の建築構造学の基礎を築いた初代学部長の佐野利器(としかた)先生、戦後初の純国産航空機「YS11」の技術委員長を務めた木村秀政先生をはじめ、多くの先生方が、わが国の科学技術の発展に大きな足跡を残されました。その根底にあるのは、誰も取り組まなかった分野に果敢に挑戦し、新しい技術や製品を創り上げたというチャレンジ精神です。「未知未踏への挑戦」こそが、理工学部に息づくマインドです。
――理工学部は都市型の駿河台キャンパス(東京都千代田区神田駿河台)と、郊外型の船橋キャンパス(千葉県船橋市習志野台)という、2つのキャンパスを擁しています。
駿河台キャンパスは抜群の立地条件にあります。日本のカルチェ・ラタンとも呼ばれる全国屈指の学生街というだけでなく、国の主要官庁が集まる霞ヶ関や大企業の本社が多い丸の内へのアクセスが良く、産官学での連携において、相談がしやすいということは大きな利点ではないでしょうか。
理工学部から徒歩1分の御茶ノ水ソラシティには宇宙開発の拠点であるJAXA(宇宙航空研究開発機構)の東京事務所があるほか、内閣府の外郭団体である日本宇宙フォーラムの本部も徒歩数分のところにあります。イノベーションの拠点となりつつある日本橋もすぐ近くです。
このような立地条件のアドバンテージを生かし、理工系はもちろん、あらゆる分野の研究者が集結し、未来の日本を創るためのイノベーションハブとしての拠点を2018年に完成したタワー・スコラをはじめ、今後建設予定の北棟などの新しい建物に集積させていきたいと考えています。
一方、船橋キャンパスには長い年月をかけて構築してきた、日本でもここにしかないと言われる研究施設・設備が数多く完備されています。オープンキャンパスに来てくれた高校生や保護者はもちろん、見学に訪れた内外の研究者や企業人の方々も、その充実ぶりに目を見張っています。
付属高校等との高大接続にも注力
――近年、高大接続が重視されるようになっています。理工学部では、どのような取り組みをなされていますか。
付属校である日本大学習志野高等学校には、理工学部進学を前提とした「CSTコース」を設けています。「CSTMUプログラム」という独自の高大連携教育プログラムを設定し、高2では1年間かけて理工学部14学科を訪問し、授業や実験などを体験して志望学科を決定します。高3になると、進学する学科の希望する研究室に入って、教授の指導を受けながら学生と共に研究活動にも取り組みます。6月の文化祭には研究の中間発表を行い、12月には成果発表会で教員や保護者を前にして研究成果を報告します。このほか、理工学部の実験科目や教養科目の一部も履修し、合格が認められれば科目等履修生として単位が認定されます。
このように、いち早く進学先を決定して大学生活のスタートダッシュを決められ、入学後の学びへのモチベーションも上がるため、CSTコースへの入学希望者は年々増え、現在は2クラスを形成するまでになりました。これらの取り組みを、本学のその他の付属校にも広げたいと思っています。近隣には、小学校から高校まで擁する付属校や私立学校があるため、小中高大連携を図ることができます。また、近年は首都圏の工業高校や総合高校との連携にも力を入れています。工業高校では在学中に製図や実習などものづくりの基礎を身につけられており、そうした学生が加わることで、学内の多様性も図られ、相乗効果が生まれています。
――今年度、オーストラリアにニューカッスルキャンパスが誕生しました。
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インタビュー:毎日新聞社 中根正義
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本学初の海外キャンパスです。学生の留学拠点とするだけでなく、ここを宇宙開発など最先端技術の研究拠点として利用したいと考えています。現在、航空宇宙工学科の学生が制作に関わった衛星が4基打ち上げられ、5基目が来年度中に打ち上げられる予定です。衛星には地球の撮像、センサを使ったリモートセンシングなどのミッションが与えられており、ニューカッスルキャンパスを通信基地局にしながら、現地のニューカッスル大との研究交流も充実させていきたいと考えています。
毎日新聞編集委員 中根正義氏取材。『I→technology(アイテクノロジー)』02号より転載。