一新された教育・研究体系で
「世界最高の理工系総合大学」をめざす
「世界最高の理工系総合大学」をめざす
専門教育体系とともに
教養教育や研究体制も改革
東京工業大学は、かねてから研究大学として大学院での教育・研究に力を入れ、1975年には「大学院総合理工学研究科」を設置するなど、学部~大学院の一貫教育を推進してきました。本学では学士課程卒業者の約9割が大学院に進学し、現在、大学院生数は修士課程が約4000人、博士後期課程は約1500人。学士課程の学生数が約4900人なので、院生数が学生数を上回っています。
進学者の増加と科学技術の高度化に伴って、大学院は研究科・専攻科の改組・拡充を図っていきました。しかし、その過程で学ぶ側の学生にとって教育体系が複雑化し、どの専攻を選ぶべきか非常にわかりにくくなっていました。そこで2016年、学部と大学院を統合・再編成し「学院」を創設しました。学部に当たる学士課程と大学院修士課程、修士課程と博士後期課程の教育カリキュラムを継ぎ目なく学修しやすい体系に変更し、学士課程から大学院への一貫教育体制をより強固なものとしました。
学士課程の学生は、1年次は理学院、工学院など6つの「学院」のいずれかに所属します。幅広い分野の学修を通して自分の進みたい領域を見つけ、2年次からは各学院のなかに置かれた「系」に所属し、専門性を深めていきます。そして、大学院修士課程・博士後期課程では「コース」を選択し、専門分野をさらに掘り下げて探究していきます。

インタビュー:毎日新聞社 中根正義

専門教育体系の改革と並んで、教養教育改革も行いました。2016年には「リベラルアーツ研究教育院」を開設しました。本学は、これまでも学部4年まで専門教育に並行して文系教養科目を履修するなど、専門知識のみに片寄らない教養と知識を身につけるため、教養教育を重視していました。この伝統をさらにパワーアップし、学士課程だけでなく、大学院修士・博士後期課程までリベラルアーツ教育を行う体制としたのです。これによって、学院が提供する「理工系専門知識」という縦糸と、リベラルアーツ研究教育院が提供する横糸によって、未来を担う技術者・研究者に欠かせない創造性や実践力、人間力を磨く教育体系が整備されました。
さらに、教育と対をなす大学の研究機能をより強化するため、これまでの研究所を統合し、新たに「科学技術創成研究院」という組織を設置しました。これにより、学生は専門の枠に捉われない、よりフレキシブルな研究が可能になり、社会の要請に応える研究も推進しやすい環境が整いました。
大学間連携で先端研究に取り組む
国際交流拠点がオープン
本学は、東京医科歯科大、東京外国語大、一橋大と四大学連合憲章を締結し、複合領域コースを開設するなど連携を深めています。3大学とは研究面でも教員同士がさまざまな分野で交流し、先端研究に取り組んでいます。
例えば、東京医科歯科大とは同大学が主体となった「生体医歯工学共同研究拠点」に連携しています。本学に静岡大や広島大を加えた4大学でネットワークを組み、生体用材料や医療デバイス、医療システムなどの開発研究を進めています。
また、一橋大とは2020年度文科省「卓越大学院プログラム」に採択された「マルチスコープ・エネルギー卓越人材」において連携が図られています。このプログラムは、ビックデータやAIなどを駆使して新しいエネルギー社会を創造する人材を育成しようというもので、一橋大や企業とタッグを組むことで、学生は高い社会構想力を養っていくことが可能となっています。
日本人学生が国際体験を積み、世界の技術の最前線を知るとともに海外から多くの留学生を招き、グローバルキャンパスを形成していくことも、これからの大学にとっては極めて重要です。
本学では、外国人学生と日本人学生の交流拠点となる施設「Hisao & Hiroko Taki Plaza」が2021年4月にグランドオープンしました。Taki Plazaは、本学の卒業生である株式会社ぐるなび取締役会長・創業者の滝久雄氏の寄付により建設されたもので、学生の「つながる場」として大岡山キャンパスの新たなランドマークとなっています。
科学技術は日々進歩し、新たな技術が続々と生まれています。そうした技術の高度化・複雑化に対応するには、最先端の高度な知識が必要とされます。理工系を志望する皆さんは、ぜひ大学院までを視野に入れた大学選びをしてほしい。東京工業大学は、その期待に応える教育体系が整備されていると自負しています。
毎日新聞編集委員 中根正義氏取材。『I→technology(アイテクノロジー)』02号より転載。