神戸三田キャンパスをリニューアル
2学部体制から5学部体制へ
2021年4月、兵庫県三田市の神戸三田キャンパス(KSC)が生まれ変わります。コンセプトは「Be a Bordless Innovator」(境界を越える革新者たれ)。これまでの総合政策学部と理工学部の2学部体制から、5学部に再編・拡充し、複雑化する社会の中で、国境や文系・理系、大学と社会といった枠を超えた教育に取り組みます。
世界は今、新型コロナウイルスの感染拡大に直面しています。医療保健分野だけでなく、経済循環をどう進めるかといった見地から、経済学や社会学の知見も求められています。分野を超えた連携によってこそ、社会変革がなし遂げられるのであり、KSCの再編・拡充は、まさにその点を踏まえたものといえるでしょう。
私たちは今、第四次産業革命とも言われる激動の時代に生きています。情報通信技術(ICT)の急速な発展により、膨大なビッグデータを人工知能(AI)が解析し、その結果を基にイノベーション(技術革新)を創出するというようなことが社会の中で日々起きています。
一方、温室効果ガス排出削減などの環境問題が深刻化し、各国が連携しなければ持続可能な発展は難しくなっています。国連が提唱している「持続可能な開発目標」(SDGs)は、まさにその点を踏まえたものなのです。国内に目を転じれば世界に類を見ないスピードで少子高齢化が進み、地方創生という課題にも直面しています。本学は、そうした社会課題に真正面から取り組み、学生一人ひとりの能動的な学びに応えていきたいと考えています。
学部横断型の起業家育成プログラムや
国際プログラムも展開
KSCは1995年、総合政策学部の拠点として開設され、今年で25周年を迎えました。国際化や情報化に対応する学際的な学部として生まれました。今回のキャンパスリニューアルは、社会の急激な変化に対応できる人材の育成と、研究を推進するために行われます。
GAFA(※1)の創業者たちは理系出身で、経営的な知識を加えることでイノベーションに結びつけてきました。そうした視点から、KSCでは総合政策学部の経営学や知財、会計などの科目を履修できるアントレプレナー育成プログラムを、理学部を母体に創設します。これに日本IBMと共同開発した「AI活用人材育成プログラム」を組み合わせ、学生の起業をバックアップします。また、SDGsに関わる講座や、シリコンバレーでの海外理工学プログラムなど国際プログラムにも力を注ぎます。
今回立ち上げる四つの理系学部のコンセプトは「『持続可能なエネルギー』の研究を軸とする地球規模の課題解決」です。理学部では宇宙物理学の主要3分野である電波天文学、赤外線天文学、X線天文学を全てそろえています。天体望遠鏡を設置した建物を新設し、最先端の研究者が宇宙の謎に迫ります。工学部ではICTやAIなどを活用し、持続可能な社会の構築に必須となる知識を学ぶことができるでしょう。生命環境学部では環境や食料、健康などの課題に挑み、生命環境分野の未来を担う人材を育成します。建築学部では都市建築や都市デザイン、都市政策を学びます。都市政策は総合政策学部が科目提供を行うなど、人文社会科学の視点を取り入れます。
本学の西宮上ケ原キャンパス(NUC)は、近代日本建築の父とも称されるW・M・ヴォーリズが全体設計をしました。調和の取れた美しいキャンパスで知られていますが、KSCもその精神を受け継ぎスパニッシュ・ミッション・スタイルで景観を整え、「全学一体の理念」を打ち出しています。つまり、景観や都市デザインの重要性を、キャンパスにいながらにして体感できるのです。そして、ヴォーリズゆかりの企業である近江兄弟社グループとは、ヴォーリズ建築に関する共同研究を行うために連携協定を締結しています。
企業との連携では、今年、大手アウトドア用品メーカーのトップブランド、スノーピークと包括連携協定を結びました。KSCは自然豊かな郊外型キャンパスです。敷地内にテントを常設し、キャンプの効能を科学的に検証するための共同研究や、環境問題解決のため、学生とスノーピークの社員が協力したマイボトルの開発など、さまざまなプロジェクトを立ち上げることにしています。
地元の兵庫県三田市との地域連携にも、これまで以上に力を入れることになるでしょう。三田市はベッドタウンとして発展してきた経緯がありますが、近年は急速な高齢化が進んでおり、都市再生などについて共同で取り組むことにしています。
自然環境豊かで調和のとれたキャンパスで、これからの時代に求められる文理横断型の新しい学びや研究に、ぜひ触れてください。
※1 GAFA=グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルの米IT系大手4社を指す。
毎日新聞編集委員 中根正義氏取材。『I→technology(アイテクノロジー)』01号より転載。