朝霞キャンパスは「命と食のキャンパス」へ
――中期計画「TOYO GRAND DESIGN 2020-2024」の下、大規模な学部・学科再編とキャンパス移転が計画されています。
文系学部は今年度、ライフデザイン学部 が赤羽台キャンパス(東京都北区)に移転し、社会学部に国際社会学科を開設するなど改革を進めています。また2023年4月には、赤羽台キャンパスに健康スポーツ科学部※1と福祉社会デザイン学部※1を開設します。理系分野としては、健康スポーツ科学部に栄養科学科※1が設置され、栄養科学や食品機能科学、栄養疫学など、健康と身体機能向上のための専門知識を学びます。
2024年4月には、生命科学部と食環境科学部が板倉キャンパス(群馬県板倉町)から朝霞キャンパス(埼玉県朝霞市)に移転し、学科の改組・再編も行います。同時に朝霞キャンパスへは川越キャンパス(埼玉県川越市)から理工学部生体医工学科、大学院理工学研究科生体医工学専攻も移転し、生体医工学科は生命科学部に合流する予定です。
ロボティクスやバイオミメティクス※2などの最先端科学から人々の健康を支える生体医工学科が加わるのです。また、食環境科学部にはフードデータサイエンスを専門とする新しい学科も設置予定であり、朝霞キャンパスは「命と食のキャンパス」に生まれ変わることになります。
――学部・学科再編やキャンパス移転に伴って文理を超えた交流が進むそうですね。
本学では今、全学を挙げてSDGs(持続可能な開発目標)達成に資する取り組みを推進しています。文理問わず、とりわけ理系ではどの分野もSDGsと関連づけることができ、極限微生物などのナノサイズから、地域づくり・まちづくりに至るまで大小多岐にわたるスケールの研究がなされています。本学は総合大学の強みを活かして、文理融合型の研究プロジェクトを推進していますが、学部・学科の再編やキャンパス移転によって、学部を超えて学生や教員の交流が一層活発化し、文理横断型の教育・研究環境がさらに充実すると期待しています。
受験生の興味を喚起する研究が進行中
―― 理系学部では、注目すべき研究プロジェクトがいくつも進んでいます。
近頃は若者も環境問題に関心が高く、環境改善に貢献するため身近なことから取り組む人が増えています。理系学部では、より具体的に環境問題解決に貢献できる研究が各学科で進められています。
例えば、都市環境デザイン学科の横関康祐教授はCO2を吸い込む「CO2-SUICOM(スイコム)」という、まったく新しいコンクリートに関わってきました。これが実用化されれば、コンクリートの塀が道路の植樹の代わりをしてくれることになり、大気中のCO2の排出量を一挙に削減できることになります。
また、今年度からスタートした東洋大学バイオレジリエンス研究プロジェクトは、深海などの過酷な極限環境でも生育可能な極限微生物の生態研究に取り組み、その成果でSDGsが掲げる目標の達成に寄与しようというプロジェクトです。社会科学では「レジリエンス」は、しなやかに社会に復活していく「回復力」や「弾性」を示す言葉ですが、 極限微生物がもつレジリエンスとは一体どのようなものなのか、それがSDGsにどう役立つのか、非常に興味深いテーマといえるのではないでしょうか。
理系学部ではSDGsの目標達成に資する研究をはじめ、社会の課題解決に向けた多様な研究プロジェクトが進行しており、受験生の興味や関心に合致するテーマも数多くあるので、これらを今以上に積極的に発信していきたいと考えています。
――コロナ禍でも、学生の主体的な学びの場を提供するために、さまざまな工夫をなされていますね。
デジタル技術を活用して学生生活をより豊かで充実したものとするために、DX(デジタルトランスフォーメーション)に注力することを決め、本年1月に「東洋大学DX推進基本計画」を策定。この計画を基にした取組み「『学生一人ひとりの成長を約束する学修者本位の教育の実現』~“3万人のLearn- ing Journey”の羅針盤~」が、文部科学省の「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン」に採択されました。その第一歩として、学生が自らの学びをマネジメントできる本学オリジナルのアプリ「キャンパス・ライフ・マネジメント・システム(CLMS)」を来年4月に稼働するべく、教職員が一体となって開発に取り組んでいます。
※1 2021年11月現在設置構想中。学部・学科名称は仮称であり、計画内容は変更となる可能性があります。
※2 バイオミメティクス=生物が進化の過程で獲得してきた構造・機能・生産方法・物質循環から着想を得て、それらを科学、医学、産業などのさまざまな分野に活かそうとする概念のこと。
毎日新聞編集委員 中根正義氏取材。『I→technology(アイテクノロジー)』02号より転載。