日本大学理工学部は2020年に創設100周年を迎え、今年で103年目を迎えました。この長い歴史の中で24万人を超える卒業生を輩出し、日本における科学技術の発展に貢献してきました。初代学部長の佐野利器(としかた)先生は、関東大震災からの復興に尽力し、わが国の建築構造学の基礎を築きました。そして、戦後初の純国産航空機「YS11」の技術委員長を務めた第6代学部長の木村秀政先生をはじめ、多くの先生方が、わが国の科学技術の発展に大きな足跡を残されました。その根底にあるのは、誰も取り組まなかった分野に果敢に挑戦し、新しい技術や製品を創り上げたというチャレンジ精神です。「未知未踏への挑戦」こそが、理工学部に息づくマインドです。
国内最大級の研究施設設備と立地条件の良さで
イノベーション・ハブ拠点形成へ
日本大学理工学部は、理学・工学を幅広く網羅する14学科そして在学生が約1万人という大規模な学部で、都市型の駿河台キャンパス(東京都千代田区神田駿河台)と、郊外型の船橋キャンパス(千葉県船橋市習志野台)というそれぞれに特徴のある2つのキャンパスを擁しています。
駿河台キャンパスは抜群の立地条件にあります。日本のカルチェ・ラタンとも呼ばれる全国屈指の学生街というだけでなく、国の主要官庁が集まる霞ヶ関や大企業の本社が多い丸の内へのアクセスが良く、産官学での連携において、現場での情報共有がしやすいということは大きな利点ではないでしょうか。理工学部から徒歩1分の御茶ノ水ソラシティには宇宙開発の拠点であるJAXA(宇宙航空研究開発機構)の東京事務所があるほか、内閣府の外郭団体である日本宇宙フォーラムの本部も徒歩数分のところにあります。このような立地条件の利点を生かし、理工系はもちろん、あらゆる分野の研究者が集結し、未来の日本を創るためのイノベーション・ハブとして、そして、日本大学の医工芸連携、地域国際連携の研究ならびにリカレント・リスキリング教育の拠点として、2018年に完成した超高層校舎タワー・スコラをはじめ、今後建設予定の北棟などの新しい建物に集積させていきたいと考えています。
一方、船橋キャンパスには長い年月をかけて構築してきた、日本でもここにしかないと言われる教育研究施設・設備が数多く完備されています。オープンキャンパスに来てくれた高校生や保護者はもちろん、見学に訪れた多くの研究者や企業の方々も、その充実ぶりに目を見張っています。来るべき持続可能な社会では、多面的観点からのアイデア創出につながる「創合知の深化」と現実空間とサイバー空間を合理的に活用する「デジタルツイン」がキーテクノロジーになると考えます。このような充実した国内最大級の教育研究施設・設備を活用し、サイバー空間で創造されたプロトタイプの妥当性検証など、デジタルツイン拠点形成も可能な位置づけにあると考えています。
総合大学の強みを活かし
実践的な学びで自主創造型パーソンをめざす
現在、デジタルトランスフォーメーションが進む中、AI、ロボット、ビッグデータ、IoTなどの要素技術をシステム化し、サイバー空間での分析・予測を現実空間に円滑にフィードバックすることで、人々の暮らしはよりよくなると期待されています。こうしたサイバーフィジカルシステムを実現し、持続可能な社会を実現するには、分野融合によるオープンイノベーションが必要です。日本大学は本学部を含め16の学部を擁する日本最大の規模の私立総合大学です。学部・学科を横断した講義や研究、プロジェクトが行われ、多様な価値観に触れ、複合的な視野を修得することができます。例えば、医学部と理工系学部の分野融合ですすめられている「日本大学未来医療ロボティクス研究」、理工学部と芸術学部が連携する「宇宙×エンタメ」ミッション、「N.U Cosmic Campus」等があげられます。
私たちの教育は、専門知識の伝達に終始するのではなく、教育研究施設を使用しながら試行錯誤を重ね、失敗から学び、課題を克服して理想に近い<もの>や<こと>の創造を成し遂げるという一連のプロセスを行う実践的な学びを提供しています。その成果は、SDGsのような国際的課題や社会のニーズに応えるアイデアやデザインを創出し、社会や地域で具現化できる力が培われた多くの卒業生が育ったこと、そしてさまざまな学生プロジェクトが社会にインパクトを与えてきたことで示されています。
『I→technology(アイテクノロジー)』03号より転載。