豊島岡女子学園中学校・高等学校
教務部長 十九浦 理孝/英語科 萩原 大

High School

#01

創立130年目の挑戦
「できそうで、できない」
生徒の競争体験が、理系進路の芽に

――貴校は最近さまざまなメディアで取り上げられていますが、本日は、卒業生の理系進学の割合が高いことについてお伺いいたします。
HPで紹介されている合格実績の系統別の割合では、1位が理学・工学系25.9%、2位が医学系16.5%となっています。理系分野を合算すると、50%を超えています。
女子の理系進学者数が多くなることは、理工系大学はもちろん国や経済界からも熱望されているところです。いつから理系進学の割合が高くなったのでしょうか。

十九浦●20年ほど前からでしょうか。何か特別な仕掛けがあったわけではなく、女子の実学志向、つまり女性はライフステージにおいて結婚や出産などがあることで、将来に向けて必要な技術や資格を考えたときに、理系、とくに医学部を志望する生徒が多かった、ということかと思います。

 

――理系の進路指導について、貴校ならではの取り組みがあると思います。他校とはどのような点が異なるのでしょうか。

あえていうなら、本校ではモノづくりに関するプログラム「T-STEAM:Pro.(ティースティームプロ)」と「T-STEAM:Jr.(ジュニア)」を中学からやっていて、それが大きいかもしれません。

まず、T-STEAM:Pro.ですが、これはスタートして7年になります。希望者を対象にした「モノづくりのコンテスト」で、イメージとしては科学の甲子園の実技科目に近いと思います。
初回はクリップモーターカーを生徒がチームに分かれて製作し、競争するコンテストを自動車会社とのタイアップで行いました。実際にエンジンを開発している女性の方に生徒と同じレギュレーションで参加していただき、いわゆるプロの方と生徒が本気で対決する場をつくったのです。

というのも、これまで行われていた生徒の内側にある理系の関心を刺激するプログラムは、講演形式が中心でした。ところが何度もやっていると生徒が慣れてしまって、著名な先生をお呼びしても出席者が集まらない状況が出てきました。いわゆる「講演慣れ」してしまったんですね。

ですので、生徒自身が試行錯誤しながら手を動かして、ときには失敗もして、そのあとで講演を聞いたら生徒が感動できるのではと思い、そこからモノづくりを経験するプログラムを考えました。

まず、生徒たちが実際にものをつくるところで、レギュレーション的には簡単には達成できないハードなものにしました。40〜50チームぐらいが参加しましたが、そのうち10チームほどしか走行できませんでした。
で、決勝戦からそのプロの方にも参加してもらったんですが、ぶっちぎりの1位に。モーター音が全然違っていました。

そういう経験をした生徒たちは、決勝戦が終わったあとですぐにプロのところに行って「どんなものを作ったんですか」と車体のところへ集まったんです。少し説明を聞いただけで「わ〜」と歓声が上がっていました。

最後に講演があって「エンジンは今回こういうアイデアでつくりました」という話に会場は「お〜」と湧き、「女性が働くとは」という話題になり、生徒は聞き入っていました。
これを普通に「電磁誘導の講演です」と開催しても、生徒からは「おー」という反応はまず出ないです。

実際自分たちがやってみて大変だったり、越えられなかった壁がアイデアひとつで越えることができる。そういう体験をすると、学びが深まり成長につながります。

一昨年はコロナウイルス感染拡大の影響もあって開催できなかったのですが、近隣の他校、男子校、女子校もお声がけして、毎回6〜7校ぐらい参加していただけるようになりました。女子だから男子だからは関係なく、同じ目的に向かって競い合い、とても盛り上がります。

 

――今後はどのような内容を予定していますか。

今年度は「筋電義手」を予定しています。
「なぜそれが動くのか」からスタートして、プログラムと生体の構造と、あとは実際にモーターを動かし、何かを掴んで移す作業でコンテストをしようと思っています。モーターを動かすところまで一緒にやって、「このモーターをどうやって使うのかは自分たちで考えてみよう」と進めています。
高校生を中心とした希望者で、40チームくらい参加すると思います。中学生も参加します。

昨年は「水上で姿勢を制御せよ(波立つプールで重りの球を落とさずに安定させるモノを作る)」という内容でやりました。(写真上)

 

――「T-STEAM:Jr.」はどのようなプログラムでしょうか。

中学1・2年生の全生徒を対象としていて、半日から1日程度で取り組むプログラムです。

今年度のテーマは「ゆっくり真っ直ぐ落ちるものを作製する」です。
生物を模した飛翔体で、レギュレーションとしては、つくった機体を体育館のバルコニーのところから落として、なるべくゆっくり落ちる機体。かつ、目的に向かってちゃんと落とせる機体。コピー用紙3枚とセロハンテープを使って、大きさが直径10〜20cmと、直径20cm以上のものを、2体つくりなさい、という内容です。

バイオニクスの勉強と、モノづくりへの挑戦、ですね。
生徒たちは、回転するもの、落下傘のようにゆっくり落ちてくるタイプのものなどいろいろなアイデアを出してくると思います。

 

――以前行われたコンテストにはどのような内容がありましたか。

去年は同じ飛翔体なんですが厚紙、紙コップ、プラスチックコップなどを使用してロケットのような機体を作成し、飛距離を競い合いました。これは、実はどのチームも同じような形になって、ただの投擲大会になってしまいました。基本的な設定があまりよくなかったと思います。

テーマはやはり「モノづくり」「STEAM」です。そういった取り組みを通して、積極的に失敗できる、試行錯誤し悩みながらも挑戦していく、そのなかでデータを蓄積しPDCAを回していくことができる人材を育てていくことが狙いです。

 

――参加した生徒の感想はいかがですか?

「次回も参加したい」がほとんどです。生徒たちがどんなに真剣に取り組んでも、実際にはほとんどのチームが飛ばなかったり、走らなかったり、ということもあります。それでも参加した生徒の満足度は、他校も含めて高いです。

ある高校2年生のチームは「悔しい」とそのあとでも研究を続けて飛ばせるようになったり、また、大学の先生に話を聞きに行ったり、STEAM学会で発表した生徒もいます。

 

――このプログラムは、生徒たちへどのような影響を与えていくのでしょうか。

中高生でも十分に挑戦できる。「無理じゃない」とわかってはいるけど、すごく難しい。そこには「楽しさ」や「わくわく」があるんだと思います。
これらを通して、理系に興味が湧く生徒は増えるでしょう。最初から「私は理系は嫌いです」という生徒もいますが、視野が広がる機会には十分になっていると思います。


(2022年5月末取材/#02『卒業生インタビューやクラブ活動で、生徒は未来の自分を見る』へ続く)

Profileプロフィール
豊島岡女子学園中学校・高等学校
教務部長・進路進学委員会主任 十九浦 理孝(つづうら まさたか)
英語科・進路進学委員会副主任 萩原 大
【学校プロフィール】
1892(明治25)年創立。
教育方針は「道義実践・勤勉努力・一能専念」。グラデュエーション・ポリシーは「志力をもって未来を創る女性」の育成。近年、女子校で東大合格者数において「女子御三家」(桜蔭、女子学院、雙葉)と変わらない合格実績を出し、「女子新御三家」のひとつとされる。医学部進学者数の多さでも知られる。
生徒募集については、高校入学は2021年度までとなり、2022年度から完全中高一貫校となる。2022年5月1日に創立130周年を迎える。

●住所:東京都豊島区東池袋1-25-22 〒170-0013
https://www.toshimagaoka.ed.jp/

Profileプロフィール
豊島岡女子学園中学校・高等学校
教務部長・進路進学委員会主任 十九浦 理孝(つづうら まさたか)
英語科・進路進学委員会副主任 萩原 大
【学校プロフィール】
1892(明治25)年創立。
教育方針は「道義実践・勤勉努力・一能専念」。グラデュエーション・ポリシーは「志力をもって未来を創る女性」の育成。近年、女子校で東大合格者数において「女子御三家」(桜蔭、女子学院、雙葉)と変わらない合格実績を出し、「女子新御三家」のひとつとされる。医学部進学者数の多さでも知られる。
生徒募集については、高校入学は2021年度までとなり、2022年度から完全中高一貫校となる。2022年5月1日に創立130周年を迎える。

●住所:東京都豊島区東池袋1-25-22 〒170-0013
https://www.toshimagaoka.ed.jp/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。