西日本工業大学

工学+デザイン思考で
地域社会の未来を拓く

学長自ら講義を持ち
国語力の重要性を説く

私は、デジタル社会における「読み・書き・ソロバン」に当たるものとして、「数理」「データサイエンス」「AI」の3つを掲げています。これに加えて「デザイン思考」を持つことが、現代社会に生きる技術者や研究者に求められる素養だと思っています。

そして、デザイン思考を養うための基盤となるのが「国語力」です。大学で実験や実習の成果をまとめることはもちろん、社会に出ても、自分の意見や考えを簡潔に言葉で表現し、相手を納得させる企画書や決算書を作成するためには国語力が不可欠であり、大前提となるからです。デザイン思考だけでなく、数理やデータサイエンス、AIも国語力があって初めて正しく学び、理解することができるのです。

国語力の基礎を固めるために、私は本学のホームページ上に『学長の部屋』というブログをつくり、そのなかで折に触れて国語力の重要性をメッセージとして発信しています。ただ、言葉だけではなかなか理解しにくい面もあるので、今年度から私が受け持っている『現代社会と教養』という講義のなかでも、文系・理系関係なく、社会で活躍するためには国語力がすべての基礎となることを訴えています。海外には工学と文学を同時に学んでいる学生が数多くいます。日本の大学もタテ割りの学問の壁を取り払い、文理横断的に学ぶことで、文系の学生も、理系の学生も国語力をはじめとする社会人としての教養を身につけるべきです。

人間中心のデザイン思考で
地域振興策を考える

西日本工業大学は、「工学とデザインの融合」を基本理念とし、自ら考え、行動する技術者を育てることを教育目標としています。しかし、ひと口に「工学とデザインの融合」と言っても、受験生や学生にはなかなかイメージしにくいことも事実だと思います。彼らに理解してもらうためには、具体的な話に落とし込む必要があります。

私はよくファッションメーカーの『ユニクロ』を引き合いに出すのですが、汗を吸ったら発熱するヒートテックにしても、汗によるベタつきやムレなどから解放するエアリズムにしても、同社の製品はすべて高度な工学技術とシンプルなデザインが一体となって生まれています。先端の科学技術と人間中心のデザイン思考がなければ、この先、日本はブレークスルーすることができません。その部分が弱いから、日本ではGAFA※が生まれないのだと言われているということを伝え、学生に気づきを与えることがポイントだと考えています。

工学とデザイン思考が結び付くことの重要性を教員の皆さんが理解し、授業にも反映させてもらうと同時に、本学の大きな目的の一つである地域社会への貢献に資するために、大学近郊の豊前市が取り組んでいる観光振興にも協力しています。具体的には、本学の教員が、市の職員や地元企業関係者、地域住民などと一体となって、地域に人を呼び込むための方策を考えています。その際の基本となるのが「人間中心のデザイン思考」で、例えばこれまでは氾濫を防ぐことだけを目的に設計されていた河川整備を、美味しい魚が豊富に獲れ、豊かな自然と人々が共生する河川にするという観点からアプローチすることで新たな水辺空間が生まれます。

本学が位置する北九州地域は、もともとモノづくりを柱とする工業都市として発展してきました。しかし、今や技術に依存して私たちの生活を便利にするだけのモノづくりは限界を迎え、人間のこころを豊かにし、自然と共生する環境や都市づくりに貢献することが工学には求められています。

インタビュー:毎日新聞社 中根正義

そこでもカギを握るのが人間中心の「デザイン思考」なのです。北九州市は今、SDGs(持続可能な開発目標)を推進しようとしています。まさに、本学の「工学とデザインの融合」が存在意義を発揮できる環境にあると言えるでしょう。これまで以上に、教員の皆さんの研究を地域社会に積極的に発信し、「工学とデザインの融合」を“見える化”することで、地域との連携を強力に推し進め、地域の未来に貢献していきたいと考えています。

思うのは人間で、思いを形にするのが「工学」です。本学が最も学生に期待するのは「やる気」です。考え方やアプローチの方法は異なっても、これからの工学は人間を中心としたデザイン思考が鍵となります。それを学べるのが西日本工業大学です。工学やデザインを学んで自分の思いを形にし、それを社会に役立てたいというやる気溢れる皆さんを歓
迎します。共に本学で学び、未来を拓いていきましょう。

※GAFA=グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルの米IT系大手4社を指す。


毎日新聞編集委員 中根正義氏取材。『I→technology(アイテクノロジー)』02号より転載。

西日本工業大学
学長
片山 憲一
1975年東北大学工学部土木工学科卒業。
同年4月北九州市役所入庁。企画政策室長、港湾空港局長、
産業経済局長、市民文化スポーツ局長を歴任。
2013年北九州エアターミナル株式会社代表取締役社長を経て、
2018年学校法人西日本工業学園理事就任。2019年4月から現職。
西日本工業大学
学長
片山 憲一
1975年東北大学工学部土木工学科卒業。
同年4月北九州市役所入庁。企画政策室長、港湾空港局長、
産業経済局長、市民文化スポーツ局長を歴任。
2013年北九州エアターミナル株式会社代表取締役社長を経て、
2018年学校法人西日本工業学園理事就任。2019年4月から現職。

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