淑徳大学

淑徳大学 地域創生学部の挑戦#01
地域の多面性をリアルに捉えるために
地域での実習関連科目を約3割に

2025年に創立60周年を迎える淑徳大学。千葉県に2キャンパス、加えて埼玉県、東京都に計4つのキャンパスを構え、学生数は5,000名を超える総合大学に成長。2023年4月には、新たに「地域創生学部」を開設し、新しい教育を実践しています。その「ならでは」について伺いました。

地域にしっかり入り、地域の側から
「どうするか」を具体的に考える

—地域創生学部が2023年4月に開設された経緯について教えてください。

「地域創生とは何か」というところなのですが、私は「ウェルビーイング」という言葉を使って本学部がめざす「地域創生」について説明しています。
ウェルビーイングとは、心も体も、また社会的にも満たされた状態であること。近年、福祉の考え方としても「ウェルビーイング」という言葉が使われるようになってきています。

淑徳大学は58年前、社会福祉学科による単科大学としてスタートしました。
学祖・長谷川良信先生が「宗教・社会福祉・教育」を三位一体とし、人間開発・社会開発に生涯を捧げたことからも、「福祉」は欠かせないキーワードとなっています。
大学全体としては、実際に触れて体験することを重視し、学生一人ひとりに付加価値をつけて成長させる実学の大学として、今日までにさまざまなミッションを備えた7学部を開設しています。

それぞれの学部・学科では一定の成果をあげてきましたが、新たにここでもう一度、学祖の考え方と本学の歴史を踏まえて原点回帰し、地域に住む人々の幸せの価値観にもとづき、その人々の暮らしをより良いものとしていく、地域においてウェルビーイングの達成をめざせる人材を育成したいと考えました。

また地域創生学部は、学祖がとなえた「人間開発を通じた社会開発」も大きなテーマに据えています。
社会開発とは、社会全体を開発し、よりよくしていくことを指しますが、私たちは、内側にある自分たちの持っている力をより発揮していく(エンパワーメント)することによって、最終的にはウェルビーイングを達成することが社会開発と考えています。

地域の皆さん一人ひとりがさまざまな活動に参加することを通して、自分の良いものを内発的に発揮して、開花していく。そうした人材が、地域のなかで、地域の資源をさらに開花させていく。そういう地域創生をめざしています。
そういった点でも原点回帰であるわけです。

—淑徳大学には、千葉キャンパスにコミュニティ政策学部がありますが、2学部の違いは?

アプローチの違いです。コミュニティ政策学部は、「コミュニティ」を通じた地域の課題解決について学びます。
人間関係、人間と人間の繋がりのなかで同一性を持った集団が「コミュニティ」と呼ばれるものです。地域社会においては、例えば、町内会や自治会などの団体がわかりやすいでしょう。

淑徳大学には学祖がとなえた社会開発というキーワードがありましたので、地域、とくに日々の生活のなかにある人々の集団というところに着目し、こうした集団や団体の機能を通じて、学生たちも地域に「サービスラーニング*1」というかたちで実際に関わりながら一緒に地域社会を再生していこうというところが、コミュニティ政策学部の設置趣旨の柱となります。

そうした教育で成果を出していく一方で、地域の多様性を立体的に捉えていく必要性も感じていました。
というのも、地域にはいろんな側面があり、その地域における産業や文化、歴史遺産のほか、人々の暮らし、さらには農産物など、地域の資源の部分をきちんと見ていく必要があります。しかも地域は多元性を持っています。
これを全部理解しないと「地域の発展や再生をどうするか」は考えられないわけです。

ですので、どちらかというとコミュニティ政策学部では、地域を集団・団体といった「個から全体」を見ていき、一方で地域創生学部は、地域の構造や、さまざまな資源をしっかりと理解しながら、地域を「全体から個を」見ていきます。このようにアプローチや手法が異なります。

 

地域創生に必要な要素を
体験と実践を通して養う4年間

—「地域実習関連科目の充実」がならではとのことですが、具体的に教えてください。

講義、演習、調査実習という一連のプログラムを通して学んでいきますが、地域の資源や背景をしっかり理解していくために、地域創生学部ではカリキュラムの約3割を「地域実習関連科目」としました。
実習に行くための準備を含め、その地域の多元性を多面的にしっかりと抑えて理解し、それに沿って自分たちなりに現場で実践的に学んでいく。これが本学部の大きな特徴であり、独自性です。

また最近、大学評価の課題となっている「学修成果の可視化」についても、それを前提としたプログラムとしています。
具体的には昨年度、地域創生の現場で活躍されている方にヒアリングを実施し、地域創生に関わっていく人材に必要な要素を分析しました。それをDP(ディプロマ・ポリシー:卒業認定・学位授与方針)と擦り合わせながらゴールを設定し、4年間の学びについてルーブリック*2などを用いて学生自身が自分の成長を定期的に確認し、実感しながらゴールにたどり着くことができます。

さらに、自習教育の機会の提供にも力を入れています。
学生には日頃から「地域創生とは日常の生活のなかにあるので、授業だけで学ぶものではない」と話しています。正課の科目を通して学ぶ一方で、正課外でも日々の生活の中でしっかりとアンテナを立てて自ら取り組んでいくことが大きな学びになります。

—「地域実習関連科目」の舞台として埼玉県三芳町、茨城県笠間市など、自治体名が具体的に示されているところが特徴的です。この4月に入学した1期生たちはどのように学んでいますか。

埼玉県の三芳町・富士見市・八潮市、茨城県笠間市の4地域に入りました。
正課外のプログラムは、現在は岩手県遠野市と千葉市で行っています。

地域創生学部はクォーター制*3をとっています。入学直後の第1クォーターでは「地域創生総論」で地域創生の基本と学習分野を理解し、6月の第2クォーターから「地域理解実習」としてエリアごとに4つのコースに分かれて各地域の自治体を訪ねてヒアリングし、地方創生計画などを2日かけて把握しました。
第3クォーター以降は、各地域に入ってインタビューなどを行い、産業や文化施設、お祭りなどを体験しながら、実際の構造や課題を体感していきます。

正課外のプログラムとしては、岩手県遠野市で夏休みに1週間滞在して「地域創生のリアルに飛び込め!『ホップの里』魅力体感ツアー」というテーマで、農村の暮らしを経験をしました。
また千葉市では、「こども若者市役所」のワークショップに参加しながら、こどもの居場所づくりや「こども基本条例」について若者の視点から検討を進めています。

そういった経験を正課外でも重ね、いろいろな多面性に実際に関わりながら学んでいきます。

—履修モデルとして「地域社会・文化モデル」「地域産業・企業モデル」を設けています。地域の産業、とくに「地域商社」に注目された点について教えてください。

地域は、日本の歴史のなかで誰がつくってきたのか。
実は「商人」がとても重要な役割を果たしています。

 

#2「国内留学と自治体からの推薦を組み合わせた入試を新たにスタート」に続く。

 

*1)サービスラーニング:地域との連携で参加型・双方向型の体験学習を行い、地域で学んだことをさらに自らの学問研究や進路について視野を広げていく教育プログラム。

*2)ルーブリック:学習目標の達成度を判断するため、何を学習するのかをいくつかの側面に分け、その学習到達のレベルを数段階に分けて、それぞれの具体的な行動特性の特徴を示した評価ツールのこと。

*3)クォーター制:1年を4学期に分けて学ぶ制度。セメスター制は2学期に分けて学ぶが、それよりも集中して授業を受けるため、密度の濃い学修が促され、長期地域実習も可能になる。

 

淑徳大学 地域創生学部
学部長
矢尾板俊平
淑徳大学コミュニティ政策学部教授を経て、2023年4月より、淑徳大学地域創生学部教授・学部長に就任。
現在、静岡県駿東郡小山町行政アドバイザー、千葉市こども基本条例検討委員会副委員長等を務める。静岡県榛原郡川根本町総合計画策定委員会委員長として、川根本町の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」・第2次総合計画の策定に関わる。主な著書に『地方創生の総合政策論』(勁草書房、2017年)がある。

淑徳大学 地域創生学部 地域創生学科
埼玉キャンパス(埼玉県入間郡三芳町)
入学定員:95名(2023年度)
https://www.shukutoku.ac.jp/extra/tiiki/
https://www.shukutoku.ac.jp

淑徳大学 地域創生学部
学部長
矢尾板俊平
淑徳大学コミュニティ政策学部教授を経て、2023年4月より、淑徳大学地域創生学部教授・学部長に就任。
現在、静岡県駿東郡小山町行政アドバイザー、千葉市こども基本条例検討委員会副委員長等を務める。静岡県榛原郡川根本町総合計画策定委員会委員長として、川根本町の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」・第2次総合計画の策定に関わる。主な著書に『地方創生の総合政策論』(勁草書房、2017年)がある。

淑徳大学 地域創生学部 地域創生学科
埼玉キャンパス(埼玉県入間郡三芳町)
入学定員:95名(2023年度)
https://www.shukutoku.ac.jp/extra/tiiki/
https://www.shukutoku.ac.jp

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