日本大学 大学院理工学研究科海洋建築工学専攻 修士2年
桑田愛理・小林真子
インタビュー:2023年7月

University

本格的な実験施設を使った
研究の経験が一生涯の糧に
これから進路を選ぶ高校生女子に伝えたいこと_後編

女性が活躍する社会の実現に求められることは何かーーー。そのひとつが工学系の進路を選択する女子が増える状況を現実のものにすること。
工学系の修学環境は女子にとって今どうなっているのか。日本大学大学院理工学研究科で学ぶ2人の学生にお話を伺いました。

桑田愛理さん
日本大学大学院理工学研究科 海洋建築工学専攻修士2年
海洋空間利用工学研究室
出身高校:千葉県私立八千代松陰高等学校

 

 

小林真子さん
日本大学大学院理工学研究科 海洋建築工学専攻修士2年
海洋建築デザイン研究室
出身高校:東京都私立日本大学豊山女子高等学校

 

 

世の中の課題に直結したテーマを選び
自分の視点や感性を活かす

—-日本大学理工学部(日大理工)で学んだことが、ご自身の卒業後、キャリアパスやライフステージにどんなプラスになると考えられるかについてお伺いします。はじめに日大理工を選んだ経緯をお聞かせください。

小林
私は付属の女子校に通っていたので、他大ではなく日本大学で自分のやりたいことができるところを探していました。
高校1年のころ海外である建築物を見たのがきっかけで、建築系に関心が湧きました。建築系であれば日大理工ですし、施設の充実についてもオープンキャンパスでよくわかりました。学べる分野の広さで、海洋建築工学科へ入学しました。

桑田
中学生のときから理科や数学が得意でした。高校生になって物理が大好きになって。あとは家のデザインなどを考えるのが得意だったので、理工学部に併設されている短期大学部の建築・生活デザイン学科を選びました。理工学部への編入は意識していました。
2年になり、編入先の選択肢として日大理工の建築学科、海洋建築工学科、まちづくり学科の3学科を比較したのですが、改めてオープンキャンパスに参加し、海の上に構造物を建てる研究におもしろさを感じて海洋建築工学科を選びました。

 

—-現在は大学院の修士課程の2年生ということで、ご自身の研究について教えてください。

桑田
居駒先生の研究室で、海洋での再生可能エネルギーである「波エネルギー」について研究しています。振動水柱型の波力発電なのですが、簡単に説明すると、波が出入りする穴が空いた箱を海の上に浮かべて、波が箱に入り内部の空気が圧縮されて水面が上下することで発電するシステムです。
波を使った発電は、日本は海に囲まれているので効率よく自給自足ができるエネルギーです。脱炭素社会の実現に向けた再生可能なエネルギーのなかでも大きな可能性をもっています。実用化については技術的には相当進んできていますが、コスト面の課題が残っています。

小林
私は建築意匠(デザイン)系の研究室に所属しています。修士設計ということで進めているのが、2025年に開催される大阪・関西万博(*1)の開催後の跡地を、観光立国としての国際医療拠点とする建築提案です。現時点では統合型リゾート(IR)として一極集中させる計画が公表されていますが、それほど具体的になっていないので、もう少し広い視点から見て関西から西日本各地に人の流れを生み出す医療ツーリズムというかたちで経済を回す拠点とすることを建築提案するものです。

*1:大阪・関西万博会場イメージ図(提供:公益社団法人2025年日本国際博覧会協会)

—-この提案では海洋建築工学科で学んだことをどのように活かしたのでしょうか。

小林
万博の会場は、大阪市此花区の人工島・夢洲です。会場の一部が海になっていているので、万博の開催時も、水を使ったアクティビティや景観も含めて提案されていると思うのですが、跡地計画としてはまだ具体的ではありません。
水上アクティビティ以外でも、心理的な効果を踏まえた豊かな水辺空間を活かした景観やアクティビティのほか、もともと大阪が水都として発展した歴史もあるので水上交通と陸上交通を絡めた提案もできたらと考えています。

 

本格的な大型実験施設では
企業と連携した研究も

—-日大理工の船橋キャンパスは、広大な敷地に大型の教育研究施設があることで知られています。また日大理工は14学科のもとで理工系のほぼすべての分野を網羅されていますが、今の研究にどう関係していますか。

桑田
実験はテクノプレース15(*2)にある水槽実験室(*3)を使っています。25mプールほどの大きな水槽で、より実際の現象に近い実験ができます。これだけの施設は他にないということで、企業と連携して取り組む実験研究もあります。

*2:テクノプレース15

「交流の場を核とした創造性を育む施設」「地域社会に開かれた施設」「周辺環境との調和と地球環境への配慮」をコンセプトとした、延床面積4,650m²の巨大な総合実験施設。設置施設は、土木・交通モデル実験室、環境水理実験室、海洋建築試験水槽および二次元水槽(海洋建築水槽実験室内)、氷海水槽(低温実験室内)など多数。

 

*3:水槽実験室

奥行27m×幅7m、水深1mの平面水槽。プランジャー方式による多方向不規則波の造波が可能で、波力による発電実験など海洋資源・エネルギー開発に関する研究の場。津波の特性や、建築物への影響に関する実証実験が行われている。

 

 

小林
海洋建築工学科は、一般的な建築学科とは異なった視点を備えていているので、気づきや、新しい考え方、たとえば陸上ありきではなく海上を利用する発想や、外部空間など環境面との関わりなどを踏まえて学べるのがよかったと思います。これまで設計課題への取り組みやコンペティションへの参加、就職活動のときなどにそれを実感しました。
建築物を建てるということは、経済的にも社会に対して大きなものをつくることになるので、いろいろな人と関わって、幅広い視点から考えることになります。
学生時代から各専門分野のプロフェッショナルの先生方から意見をいただくことができる経験は、貴重だと思います。

桑田
異なる専門分野の先生から幅広い視点でアドバイスを受けることができるメリットは私も感じます。
波力発電の研究では、波とエネルギーに注目していますが、エネルギーを電気に変えるところでは機械系が入ってくるので、機械系の先生方からも指摘をいただいて、異なる視点から見ることができたので、それが強みではないかなと思います。

 

就活では、女性の働きやすさが
企業で実現しつつあることを実感

—-今世の中には、理工系で学んだ女性が広く求められています。にもかかわらず工学分野を選ぶ女子は少ないのが現状です。

桑田
文理選択で迷ったら、理系だからどうとか、文系だからどうとかじゃなくて、その先のことを考えてそれをするためにはこちらに行った方がいいっていう考え方で進路を決める方がいいと思います。

小林
実際入学して、人数は男子の方が多いけれど、女子だから何かができないと感じたことは一度もないですね。

桑田
私もまったくないですね。

小林
実験なども男女一緒になってみんなで授業を受けたりそこに差は感じないですし、むしろ先生たちには目をかけていただけているかもしれません。
実は・・・私は物理が苦手で、高校の時の成績はだいぶ悪くて(苦笑)。でも、構造の授業とかはそれなりの成績は取れました。高校時代の成績が悪くても建築が学べないわけじゃないし、好きなことだから大丈夫でした。

 

—-大学院修了後の進路について教えてください。

小林
私は設計事務所で意匠系の設計者として働く予定です。
就活では、福利構成とか制度が充実していたりする大手から見ていったのですが、どの会社を見ても、女性の育休とか働き方を良くしたりする動きっていうのは結構進んでいる印象でした。
内定をいただいた設計事務所では女性も多く働いていて、実際に子育てが終わってから復帰した方とか、男性の方で育休を終えて、子育てをしながら働いているという方の話も聞いて、説得力のある福利厚生にはなっていたので、やりたいことで選びました。

桑田
私は造船会社から内定をいただいています。
洋上風力発電などのエネルギー事業に力を入れている会社なので、将来的には波力発電に携われたらと願っています。
大学では大きな実験施設を使って研究できましたが、計算だけでは分からないようなことや、予想を超えて実際に出現する現象を在学中に経験できたことは、入社後に役立つと思います。
また、就職してからも研究室に戻って相談できることが大きいと思います。今も研究室で卒業された先輩たちと関わり、どんなことをやっているかという話を聞いたりしてます。

 

—-居駒先生、おふたりのお話しをお聞きして、改めて如何ですか。

居駒
桑田さんが話題に出した、研究室での卒業生と在学生のネットワークは、私の研究室に限らずどこも強いですね。卒業生にしてみれば自分が出た研究室に戻って、先生に直接相談しやすいのでしょう。

また、小林さんの就職の話題ですが、建築系は他学科よりも女性は圧倒的に多いところで、施工で現場に行くよりも内勤となり、かつ花形である意匠系がもともと多い印象です。
仕事としては、建物の企画から竣工、引き渡しまで全てのマネジメントに関わるので、就労時間が長くなりがちなところもありました。しかし、多様なものの見方、考え方が求められる仕事ですので、女性が必要です。
ここまでお話しした通り出産や子育てのしやすさなど、女性が働きやすい環境を整え直しているところだと思います。

 

—-そういえば小林さんは2022年に千葉県建築学生賞で優秀賞を受賞されていますね。

小林
渋谷の再開発について「谷に繰り出す」(*4)というテーマで建築提案をしました。建築単体ではなく、街のなかに建築があることでその街がどう変わっていくのか、建築の視点から街を考えることができたのは、私が海洋建築工学科で学んだことが大きいと思います。

 

「不得意な理系科目があるから」を
文系選択の言い訳にしないで

—-高校生女子が理系、とくに工学系の学部学科選びをするときに、ポイントになるのは何ですか。

居駒
小林さんのお話を聞いていると、確かに建築デザインを学んできたのだけれど、実は街(地域)全体を見ています。海洋建築工学科で学びながらもこの視点や発想が育まれたのは、建築学科、まちづくり工学科、土木工学科が揃っている本学部ならではでしょう。
桑田さんについては建築への関心から意識が発展した結果として波力発電の性能について研究しています。波力発電は装置を考える機械系や電気工学分野で本来扱われています。先ほど実用化の話題がありましたが、経済性を考えると機械・電気装置としての技術的な問題解決だけでは先に進みません。建築系なので社会科学も視野に入れて、どの地域であれば設置することで活性化できるかなど、社会システムやデザインの考え方を踏まえて、かつ「海」という環境まで多角的・総合的な視点をもっているのが特徴だと思います。
また桑田さんの場合、はじめに短期大学部を選んで2年かけてじっくり自分に向き合い、基本を学びながら工学系の中身を見て進路となる学科を考えたことも結果的によかったと思います。ちなみに、併設の短期大学部の卒業生の約8割が、4年制の学部へ編入しています。

 

—-居駒先生、この取材では工学分野の修学環境や進路について、女子にフォーカスして最新のお話しを伺いました。最後に全体についてまとめをお願いします。

居駒
高校の進路選択では、文系を選ぶ理由に「理系科目が不得意だから」があると思いますが、そこで「文系科目は得意ですか」と尋ねるとそうでもない。気のせいであることが多いと思うんです。
だから桑田さん・小林さんがいったように科目の得意不得意ではないところから考えてほしいと思います。

「目標をもって」「将来のことを考えて」といういい方は、好きではありません。私もそれができたわけじゃないから。
でも先のこととして、営業をやりたいのか、技術者をやりたいのか、そのあたりから考えて将来をイメージしてほしい。
文系の仕事は室内で汗はかかない、理工系の仕事は作業着きて汗かいて、という印象があるかもしれませんが、それは幻想というか、明らかに違いますよね。

実は将来の就職を考えるときに、文系を選んだら文系の仕事しか選べませんが、理系を選べば文系・理系どちらの仕事も選べるんです。
ですので、文理選択で迷ったらまず理系を選んでほしいと思います。工学はその先にあります。

もう一つ付け加えたいのは、工学系はどの分野でも社会科学的な作業が入ってきていることです。機械系であれば最近は社会背景が重要だということでデザインが入ってきていて、そのためには社会科学的な計画論や、アンケートなどの社会調査が必要になる。感覚をどう定量化するか、ということでデータサイエンスなど技術的にはレベルがどんどん上がってきていて、そういうことを工学系のどの分野でもやっています。
「見た目が汚い」「辛くて汗をかく」っていう環境は、40年くらい前はそうだったけれど、今は違う。それはしっかり伝えたいですね。

実際のところでは、高校生女子の皆さんから「地球温暖化とか気候変動、環境問題をやりたい、どの分野に行ったらいいですか?」と質問をいただきますが、おすすめは土木工学科です。身近に感じることができて、かつ国内での就職につながっていますので。
その次のおすすめは物質応用化学科です。地球環境に関心があるなら、ぜひ工学を幅広い視点から検討してください。

また、一般選抜で受験する女子高校生にもオープンキャンパスにぜひいらしていただいて、日大理工で学んでいる先輩たちのお話を聞いていただきたいと思います。

 

—-おふたりには、また5年後か10年後に、振り返ってどうだったかをぜひ取材させてください。本日はありがとうございました。

 

*4:千葉県建築学生賞 優秀賞受賞作品「谷に繰り出す」
https://chibagakuseisyou.jp/?page_id=2000

Profileプロフィール
日本大学理工学部  
College of Science and Technology,
Nihon University
学科:土木工学科/交通システム工学科/建築学科/海洋建築工学科/まちづくり工学科/機械工学科/精密機械工学科/航空宇宙工学科/電気工学科/電子工学科/応用情報工学科/物質応用化学科/物理学科/数学科
キャンパス:船橋キャンパス (千葉県船橋市)/駿河台キャンパス(東京都千代田区)
入学定員:2,030名(2024年度)
https://www.cst.nihon-u.ac.jp/
Profileプロフィール
日本大学理工学部  
College of Science and Technology,
Nihon University
学科:土木工学科/交通システム工学科/建築学科/海洋建築工学科/まちづくり工学科/機械工学科/精密機械工学科/航空宇宙工学科/電気工学科/電子工学科/応用情報工学科/物質応用化学科/物理学科/数学科
キャンパス:船橋キャンパス (千葉県船橋市)/駿河台キャンパス(東京都千代田区)
入学定員:2,030名(2024年度)
https://www.cst.nihon-u.ac.jp/

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